PORSCHE 356 のフルレストア

ユーロのレストアに手抜き作業はありません。
お客様と作業者が納得いくまで作りこみます。

ここに紹介する多くの写真は、5年の月日をかけ丁寧に作業を施し
ほぼ完璧を目指した PORSCHE 356 B の作業のすべてを公開しています。


ポルシェ356のフルレストア依頼を頂きました。
356の泣き所、作業方法、作業内容をすべて公開します

まづずは現状把握のため細かく調査します。


トランクルームは案外まともに見えるが・・・
過去の修復暦がありインナーファンダーにまでダメージあり燃料タンク内とタンクのボトムも錆がひどく再使用不可。
小物類が取り外されていくとだんだんに見えてきます。バッテリーボックス底部はすでに朽ち果ていた。
この奥の雨どい部は356の弱いところ。
ハーネス及びフューズボックスもひきなおし作業が必要
ドアパネルヒンジ部長年のストレスの溜まり場です。
とくにドアヒンジボトム側注意。
過去にクラッシュ暦あり、その修理方法に問題があり、各部に錆と鎖が発生している。
下回りの観察
厚いアンダーコート処理が調査と作業を困難にしている。
ディアゴナルメンバーはフロントセクションの最も重要部
やはり、メンバーとボデーのつなぎ部には重大な
ダメージが来ています。
タイヤハウスインナー後部室内からの雨漏れとジャッキアップによるダメージ
サスペンション及びステアリング関係は
大きなダメージは無く、OH後再利用可能
ジャッキアップの為のパネルはほんとに使用したらフロアーを突き抜けてしまいそう
写真ではまともに写るフロアーパン
まさか、度重なる粗末な修理のため三重になっているとは
今回はミッションも同時に完全OHします。
前回の修理の際にエンジン本体はOH済み
今回は補記類及びお化粧直し作業
リアフロアー後部、リフトの爪で丁度見えない部分は
フレーム構成上最も重要部であり、
また、最も痛みのはげしい部分
冬場にヒーターの効きが弱い車輌の多くがフロアー内を通過するヒーターダクトのダメージ
大体の様子を掴んだ所で、パーツ一つ一つを丹念に外して
いきます。どんなに朽ち果てた小さなパーツでも絶対に捨て
てません。組み付け時に何かのヒントになるからです。また
、こういう特殊な車輌は新品パーツが入手不可能な場合も
多いので、再利用もしくは新規製作する場合も考えられま
す。ねじのひとつにしても丁寧に保管します。また、作業が
長期間(3年とか5年とか)になるのも希ですので、外したパ
ーツ類の整理と保管を軽視してはいけません。組み上げの
際の作業効率は、このパーツの保管整理にかかっています
。ハーネスなど、改造されている部分は最もあとになって頭
を悩ませる種であり、このばらし作業時に解決しておくことが
有効で重要です。
パーツがストリップされたボデーは旧塗膜及び、パテ、サフ
の剥離作業に入ります。交換されるパネルはこの時点であ
る程度切り取ってしまいますが、ボデー寸法に影響のある
サイドステップ周りと各ピラー部は注意が必要です。また、
サンドブラストの不可能な袋状の部分(356の場合サイドス
テップパネルインナー部)は切開しておく必要があります。

いざ、サンドブラスト工場へ。
2週間後、ようやくブラスト作業終了、ここで初めてこの車輌
のボデーの詳細状況が明かされます。
写真では判りませんが、1〜2mmの錆び穴が無数に確認できます
三重構造のセンターフロアーも切り取られ今後の作業の大
変さを予想させます。
リアフロアーの左右サイドの下部はリアガラスからの雨水の浸入を排出させる構造になっており、要注意。
フード及びトランクパネルは上等でした。フードの先端は
水が溜まりやすく鎖の見受けられる車輌が多い。
フロントウィングは写真の通り一体に見えますがよく見ると三分割のパネルを溶接で繋いであります。いい仕事です。
ブラスト終了後は直ちにサフ入れ((すべてのレストア作業
で最も重要視しています。レストア後数年で錆が発生するよ
うな車輌はこの時点での作業法、使用材料、コンプレッサー
エアー内の水分、作業者の汗等の管理が不十分と考えられ
ます。))を行い、新たな錆びの発生を防いでおき、修理作業
はあとでじっくりと進めます。
当社の使用塗料はデュポン製の2液型ポリウレタンサフェー
サーを使用しています。厚吹が可能で、シール効果も高く、
いい塗料です。ここまで終了すれば一息つけます。

フレッシュエアー取り入れ口の下部
雨水が入りやすく、しかも抜けにくい部分。
同じ箇所を裏から見てみると、各パネルが複雑に組み合わされた部分で、各パネルごとの切り継ぎ作業となる。
フューエルフィラー部、フィラーの取り付けの際に間に挟む
スポンジ状のガスケットが水を含むのが原因。
ダメージのあるバネルをひとつひとつ作り出しては溶接し、ハンマリングしては整形していく地道な作業が続く
過去のクラッシュの影響がフェンダー上部にまで及んでいる 新しいフロアーパネルの張り合わせ作業
ここの部分がヒートエクスチェンジャーからの暖かい空気を
室内に導く部分、新しいダクトホースにて配管。
フロアーとサイドパネルアウターを結ぶサイドインナーパネルの新規製作。
新しいロッカーパネルの組み付け作業 バッテリーコンパートメントボックス及びタイヤハウスクロッシングパネルの組み付け作業。
フロアーパネル修理作業完了 さび止め処理及びシーラント後に下地仕上げ処理
今回は今後のことを考え、ジャッキアップ箇所に、
補強パネルを追加製作。
ドアパネル底部の製作及びさび止め処理
フロントパネルの損傷部は協議の結果
新たにパネルを新造することに決定。
表にはまだ出ていない腐食部も裏から見ればかなり進行していたため、大き目のカットとなる。
新たに一枚板よりたたき出されたパネルの仮付け。 まるいボデーとの全体的なバランスが重要
位置あわせ終了後に溶接作業、溶接熱によるパネルの伸び
を注意しての高度な作業。
溶接箇所をサンディングするとパネルの一体感が出てきますが、ここでもハンマリングにて細かな修正が続く。
ハンマリング終了、すでに違和感は無い。 フロントパネル修理作業終了
フェンダーパネル溶接取り付け、フードパネルとの散りあわ
せ、ようやく自動車らしくなって来たようだ。
ここからは腕の見せ所!パネルの修正作業はこの後3ヶ月続き7〜8回の下地作り作業が繰り返された。
エンジンフード内もすべて下地を仕上げ。 すべてのパネルの下地作業終了。
いよいよ塗装作業に入ります。カラーはお客様のオーダー
の当時の356の純正色である薄いシャンパンメタリック、
奇跡的にデータが入手で来た!
ベースコートはDU PONT CENTARI LEシリーズにて
トップコートクリアーは同じく DU PONT ULTRA MS2

塗膜は3:1特有の強く、深みのある、濡れたような艶を
形成し、うっとりするような仕上がりを実現させました。
塗装作業の仕上げはバフによる磨き出し、吹き終わった塗膜はそのままで十分な肌を表現していますが(一般車輌の塗膜はこの時点で終了)さらに水研ぎ、粗とぎ、中とぎ、粗磨き、中磨き、上磨き、仕上げ磨きと繰り返すことにより、落ち着いた、より深みのある質感を得ることが出来ます。
356はすべてのパネルが絶妙なRでまとめられている
このデザインをした人は天才だと思う!(ポルシェ博士?)
フード内も新車以上の仕上がりとなる。
かなり注意して仕上げたフロントフェンダーからドアパネル、
そしてリアクォーターパネルまでのアウトライン。
クラッシュダメージのひどかったLFインナー及びLFフェンダー。
ディアゴナルメンバーももう安心。
再生されたバッテリーコンパートメントフロアー。
複雑に入りこんだフロアーからの立ち上がり部。 ダッシュパネルはドライバーの直視する部分アウターパネル同様の仕上がりをもとめる。
これだけの仕上がりにもっていけば、以降、10年でも20年でもこの状態を維持できるでしょう。
新造のエンジンコンパートメントフロア。
いよいよ、組み付け作業にかかりますが
これ以降は次の機会にします。。

次回は、組み付け作業から完成までをご紹介する予定です。
おたのしみに。


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